【ヅラ訴訟】「かつらを返せ！」　撮影用かつらの所有権巡り松竹撮影所と製作会社が対立

時代劇などの撮影用かつらの所有権を巡り、松竹撮影所（京都市右京区）と老舗の製作会社「八木かつら」（北区）が対立している。双方がかつらの引き渡しを求めて15日までに京都地裁に提訴した。製作会社側は製作や修理を担っている自社に所有権があるとし、「業界では『かつらはリース品』が常識」と主張する。一方の撮影所側は「製作費を負担しており所有権がある」と訴える。

撮影所側の答弁書によると、撮影所には3千点を超えるかつらが保管されているという。

製作会社側の訴状によると、同社は松竹撮影所から映画やドラマの撮影に用いるレンタルかつら一式の支度準備や修理、撮影現場での着脱などの業務を継続的に受託。撮影所内のメーク室を賃借し、かつらなどの道具を保管していた。

昨年4月以降、コロナ禍で撮影中止が相次ぎ、同社が職員の常駐体制見直しを告げると、撮影所は次の撮影を別会社に委託。メーク室の賃借契約が同9月末で終了することになった。同社が保管していたかつらなどを引き揚げようとしたところ、撮影所は所有権や使用権を主張。協議したが折り合わなかった。双方の取引に契約書はなく、発注金額は撮影所側の予算で決められており、見積書に明細が記載されることはほとんどなかったという。

今年4月、撮影所や第三者が無断でかつらを使用しないよう同社が申し立て、京都地裁が占有移転禁止の仮処分を決定した。

撮影所側も、製作会社が撮影所から持ち出したかつらが返却されていないとして、計69点の引き渡しを求めて京都地裁に提訴している。

八木かつらは「信頼関係が損なわれたことは非常に残念」とし、松竹撮影所は「当方の正当性を裁判で主張していく」としている。